ライオン
「……ちゃん?
……ケンちゃんってば!
ちゃんと話聞いてる?」

健次は梨華の呼び掛けに我にかえるが、視線は公園から外さない。

「悪い、先行っててくれ」
俺は梨華の腕から離れると、公園に向かって歩きだした。

「えっ!?ちょっとケンちゃん、どうしたのよ」

健次は梨華の質問に、振り向かず手を振る。

「後で行くからよ!
気にすんな」

梨華は、公園に向かって消えていく健次の後ろ姿を、不愉快な表情を浮かべて見送る。

「も〜、急に何なのよ!
ケンちゃん意味判んないし」

そこに先に進んでいた圭一が戻ってきた。

「何してんの?
早く行こうぜ」

「ケンちゃんが後から行くって、いきなり公園行ったのよ」

圭一は梨華の説明に驚く様子もなく応える。

「後から来るんだろ?
だったらほっとけよ。
あいつが変わってるのは、今に始まった訳じゃないし」
< 9 / 47 >

この作品をシェア

pagetop