威鶴の瞳
スッと手を伸ばして握る拳は、宙を掴む。
目を開けば、見慣れた天井。
暑くて、熱くて、ひどく寒い。
息がしにくい、苦しい。
頭が、喉が、肩が、背が、腹が、足が。
キシキシと痛む。
それでも、あの夢の方が何倍もイタイ。
あの時の方が、何倍も――。
「嫌な感覚がする」
ポツリ、独白をこぼす。
ベッタリとまとわりつく、汗。
あの夢を見ていたのなら、仕方ないことだろう。
だが。
この、圧迫されるような喉の痛みに、鼻づまりにより乱れる息。
頭がズキズキと、痛む。
「やらかした」
どうやら、風邪のひき始め、らしい。