威鶴の瞳


――飯を食べる前に、病院に行けばよかったのかもしれない。

二度目に熱を測れば、『39.0℃』というバカみたいに高い数字。



俺の平熱は35.5℃だ。



さっきよりダルさが増し、動こうとしても面白いくらいに動けない。

まるでパンダのような動きだ。

歩いて休み、歩いて休み、猫背で寝転がる、ちょっとタンマ。

ダメだ、これじゃ一人で何もできない。



だからといって家族には頼れない。



はぁ……一つため息をつくと同時に浮かぶのは、なぜかトーマ。

アイツか……でも、アイツくらいだろう、今の俺が頼れるような奴は。



ただ、家を知られることが少し問題だ……。

BOMBの規則がどーたらこーたら。

マズイ、思考まで面倒になってきている。

考え事をすることが、そもそも辛い。



もう、どうでもいいから召喚してしまおうか、トーマを。

いや、まて、俺はあくまで戸籍上が『女』なわけであって、体のつくりはあくまでも『女』なわけであって、そのあくまでも『女』の部屋に戸籍上『男』のトーマを招くなんて、でもトーマは俺のことを『男』だと思っているわけで、それに威鶴として会うとすると規則が――あぁ、もう面倒だ。



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