威鶴の瞳
「誰だ?」
中から、ドスの効いた声がした。
扉を開けて、黒ソファーに座る五人を見る。
用があるのは右方向奥の金庫。
実力者五対一で俺が金庫に向かうのは、少し厳しいだろう。
そんなことを考えていると、隣に並んだトーマが話しかけてきた。
「なぁ、威鶴」
「なんだ?」
「トップって、真ん中の奴か?」
そんなことを聞くトーマに、俺は真ん中のソファに座っている男を見て「あぁ」と肯定する。
すると、その真ん中の奴が口を開いた。
「ふっ……そんなひょろい奴連れて俺らのアジトに来るなんざ、俺らもナメられたもんだなぁ、竹原」
竹原透眞、トーマの本名。
しかし今は、トーマはその名を捨てている。
今はただの『トーマ』だ。
この男は、どうやら昔のトーマを知っているようだった。