威鶴の瞳


公園のベンチ、気付けば空を見上げて、笑っていた。



「……笑えるな、笑える。もう1人なんかじゃないぜ」

「笑えない。鏡の奥に閉じこもってしまった、私」

「……」

「眠らせとけ」

「いつか、目が覚めるまで、私が依鶴をする」

「……」

「……俺はお前の嫌な所を引き受ける」

「あなたは、依鶴の怒りの部分?悲しみの部分?」

「……」

「俺は依鶴の我慢していた負の塊だ」

「私は、優と善、依鶴の偽者」

「……」

「それと本心、だろ」

「そう、ね」

「……」



──壊れた。

依鶴は3つに分裂した。



負・偽・無。



簡単に言えば、『多重人格障害』。

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