威鶴の瞳
『依鶴』が心を閉ざしたことにより『依鶴』の中の鏡の裏で誕生した、私と威鶴。
本人は一切自覚なく、私たちと本来の『依鶴』を作り出した。
しかし何かが原因で、『依鶴』は目を覚ましかけている。
長かった眠りから、覚めようとしている。
心を開き始めた。
それが嬉しい反面、怖い。
今度は、私たちが必要なくなる……。
「お前は……」
「……え?」
トーマがポツリと言った言葉は、空気に溶け込むような声音で。
「誰もいない、っつーのは、いらないわけじゃないんだな?」
「……透眞、さん?」
ざわつく胸、どこからか湧き出して来るような、緊張。
決意のような、強い瞳を向けてくる、竹原透眞という男。
「俺はお前を独りにしない」