威鶴の瞳
「……依鶴さん……?」
透眞が心配の声を出す。
当たり前だ、誰だっていきなり目の前で泣かれれば焦りもするだろう。
「すみません、気にしないでください」
「い、いや、ムリだろ。俺なにか気にするような事言ったか?」
そんな、いつものトーマらしくない透眞が見れて、少し笑う。
「え、おい?」
「嬉し涙ですから、気にしないでください」
そう言って、彼の手を握る。
ぎゅっと力を込めれば、そこに確かに存在するぬくもり。
安心する。
人肌って、触れるだけで、安心するんだ。
……本当は全てを伝えてしまいたい。
透眞なら、全部受け入れてくれるから。
でもまだ今は、依鶴とトーマの距離は、まだまだ遠いから。
「ありがとうございます」