威鶴の瞳
いつものトーマと何も変わりないと、逆に先程までの事が夢だったかのような感覚になる。
「そういや威鶴、声変じゃねーか?」
「ケンカ売ってるなら一瞬で終わらせてやる」
「ちげーよ!なんか……鼻声じゃねーか?」
さすがトーマ。
早速気付いてきたか。
長い間パートナーをしていると、ごまかしが効かなくて困る。
「移ったかな」
「ゲ、今度は威鶴かよ」
当初の予定通り、依鶴から風邪をもらったことにするが。
……なんだその心底嫌そうな顔は。
男と女でずいぶんと態度が違うな。
「大丈夫だ、お前を呼び出すことはない」
「……そう言うと思った。規則もあるしな」
その規則を破るほどに俺の体は弱ってたんだけどな。