威鶴の瞳


つまり、『依鶴』がまた元に戻ったら、俺がいるこの場所は必要ないもの……むしろあっちゃいけないものになる。

昼も夜も働くなんて依鶴一人では不可能だ。

体力的にも、精神的にも。



これは二人居るからこそできる特殊な生活スタイルだからだ。



そうなれば必ず、『依鶴』は占いを選ぶだろう。

以前からずっと続けていたものだから。



だからこそ、俺はせめて、正規にはならずにいる。

いつまで続けられるかはわからないが、早く辞められる状況になることを願って。



俺は、依鶴とは考え方が違う。

依鶴はもとの『依鶴』に消されることを、吸収されることを、恐れている。

恐れて、眠ることすら怖い。



だが俺はそうなることはいいことだと思っているから、出来れば早く吸収されたい。

俺たちが吸収された時、それが『依鶴』の心が回復した証だと考えているから。



昼間、鏡の向こうにいる『依鶴』が姿を現した、らしい。

俺も、こっちの依鶴も目を覚ました覚えがないからだ。

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