威鶴の瞳
終わりが近付いている。
嬉しいような、寂しいような、終わりが。
その終わりのカギとなるものは、俺の中でなんとなく予想が付いている。
依鶴は、気付いているだろうか……いや、依鶴は気付いていないかもしれない。
目の前にいるこの男が、本来の『依鶴』の再生につながるということに。
「威鶴、どうかしたか?」
「……あぁ、いや、少しボーッとしてた」
トーマの声でスッと意識が現実に戻った。
……少し暑いかもしれない。
熱がまた出て来たか。
そう思った時、いきなり扉が開かれれ全員の意識がそこに集中した。
「……マサル?」
そう雷知が言った通り、そこにはマサルがいた。
少し息を切らしている所からして、急いで来たんだろう。
……でも、なぜ?