威鶴の瞳
「……は?」
トーマはとりあえず言葉を出しただけで、他に言葉が思いつかなかったんだろう。
俺も絶賛そんな気分だ。
「威鶴とトーマがいなかったら、この依頼は片付かなかったし、こんな早くケリがつくこともなかった。やっぱお前らすげーよ!」
そう言われ、依頼人の渡辺春の未来を思い出した。
彼女が未来にいないと、あの時は淡々と告げていたが、本当はひどく怖かった。
それが自分の事だったら?
例えばトーマとか。
今ここで会っているのが、俺の人生で最後に見る姿だったとしたら。
俺は……依鶴はまた、壊れるかもしれない。
何よりそれは、依鶴が最も恐れる未来だから。
依鶴が自ら仮眠をとるほど、本当あの時焦っていた。
渡辺春の未来に彼女がいないことと、姉の過去で依鶴が消されていたこと。
それが重なった。