威鶴の瞳
さて、約一ヶ月ほど前に遡ってみようじゃないか。
あれは、そう、一番新しい竹原叶香からの依頼だ。
「お前、竹原叶香からの依頼物覚えてるか?」
「……鍵、だったよな?」
「何の鍵に見えた?」
「大きさからして……家か……?」
そう、あの時に鍵を奪還した。
今考えてみれば、鍵なんてなくしたり取られたりしてはいけない物だから、急ぎで奪還を頼まれるのは当たり前だと思っていた。
だが、トーマは慌てたり怒ったりしなかった。
自分の家の鍵じゃないと、認識していた。
若干金色がかったその鍵は、まだ新しく見えた。
だが、今それを思い出してみると、いろいろとおかしい。
まず、トーマの様子からわかるのは、実家の鍵ではないこと。
そして鍵が新しいということから、鍵を作ったとかそんなとこだろう。
別の奴の家の鍵。
そして家に帰らない。
隠しごと、様子の変化。
「年齢からして、別におかしいことじゃないし、異性や家族に隠したっておかしくもない」
だからジト目で俺を見てくるのはやめてくれ、トーマ。