威鶴の瞳
前例がない事態に、私は少し焦りを感じていた。
「あの、えぇと……」
どうしたら、いいだろう?
「妹に今何が起きているのか、知りたいんだ」
「……えっと」
「危険なことに足を踏み出してるかもしれないんだ」
そう言ったトーマの声は、少し震えていた。
心配、しているのか。
こんなでも1人の女の子の兄。
族のTOPだとしても、1人の女の子。
「……わかりました」
この選択が正しいのか、なんなのか、よくわからない。
でも今は──助けたいという思いが強かった。