威鶴の瞳
コイツ……トーマは、年上ならネーチャン、年下はジョーチャンと呼んでいる。
姉も一人いるらしいけど、名前は聞いたことがない。
過去には族の頭をやっていたという情報もあり、女遊びも酷かったらしい。
それでも別に問題はない。
ただの仕事上でのパートナーという以外に、接点は皆無。
普通に遅刻してくるのは腹が立つことでもあるが。
この遅刻癖どうにかならないのか。
「依頼書」
そう言ってトーマに一枚の紙を渡す。
現在、深夜2時。
丑の刻。
もともと人通りが少ないこのビルの影にある道は、両脇を木が囲っている。
さっきはその木の裏に隠れて月を見て待っていた。
眼帯をしている右目には、あの明るい月の光は届かない。
「読んだか?」
依頼書に目を通しているトーマに聞く。