威鶴の瞳


トーマとレインは封筒の引っ張り合いをしている。

……よくわかるよ、私も手放したくないもの。

その半額すら。



最終的に勢いをつけてレインが封筒を引き抜いた。



「た・し・か・に・受け取りました。そしたら依頼書に名前を書いて、今日はおしまい」



トーマは眉を寄せてとっても悔しそう。

人間、諦めも大切よ、トーマ。



でもその10万分、トーマの不安は大きいんだと思う。



私は依頼書に名前を書き、トーマとBOMBを出た。



会話はない。

トーマから、緊張が伝わって来る。



やっぱり、心配なのかな?

妹の事……だもんね。

家族の心配、普通はするものだろうから……。



「ついて来てくれて、サンキュな」



ポツリ、トーマが呟いた。

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