威鶴の瞳
「いえいえ、お役に立てたならなによりです」
私もそう答えて、暗くなった空を見る。
夜の10時前、この時間まで依鶴でいたのは、久しぶりかもしれない。
だからか、少し疲れた。
トーマがいなければ、すでに威鶴と変わっているところ。
そう考えながら、少しボーッとした頭でトーマの隣を歩く。
トンッ……肩が触れ合ってしまった。
「あ、すみませ……」
トーマの顔を見るとなぜか少し驚いたような表情。
辺りは暗くて、顔色までは見えないけれど、すぐに顔を反らされてしまった。
気分を害させてしまったのだろうか……?
「すみませんでした、もう少し離れて歩きますね」
「え?あ、いや、ちが、コレは!」