威鶴の瞳
パシッという音と共に、掴まれた手。
大きく、私の手をスッポリと覆ってしまえる、大きくて力強い、男の人の手……。
カアァァァッ
自分の状況を理解すると、途端に顔に熱が集まる。
手を、握られて、いる。
そんな事は今まで経験したことがなくて、それだけでも限界なスキンシップ。
母も父も姉にすら、された事がない。
触れられることに、慣れていない。
しかも不意打ち!
自分から触れる事なら出来るのに、逆に触られるとドキンと心臓が跳ねる。
緊張、してしまう。
思考が渦巻く。
でも……ふと思い出してしまった。
あの風邪の日、私は起きたらベッドに移動していたけれど。
あれはトーマが……その……だ、だっこ、とか、し、し、したり、し、したんだろうか……な、なんて……。
……それとも、『あの子』が起きて、自分で……いや、動けるはずないか、あの熱で。