威鶴の瞳


パシッという音と共に、掴まれた手。

大きく、私の手をスッポリと覆ってしまえる、大きくて力強い、男の人の手……。



カアァァァッ

自分の状況を理解すると、途端に顔に熱が集まる。



手を、握られて、いる。

そんな事は今まで経験したことがなくて、それだけでも限界なスキンシップ。



母も父も姉にすら、された事がない。

触れられることに、慣れていない。

しかも不意打ち!



自分から触れる事なら出来るのに、逆に触られるとドキンと心臓が跳ねる。

緊張、してしまう。



思考が渦巻く。



でも……ふと思い出してしまった。

あの風邪の日、私は起きたらベッドに移動していたけれど。

あれはトーマが……その……だ、だっこ、とか、し、し、したり、し、したんだろうか……な、なんて……。

……それとも、『あの子』が起きて、自分で……いや、動けるはずないか、あの熱で。
< 215 / 500 >

この作品をシェア

pagetop