威鶴の瞳
『威鶴──』
そう、私に向かって、彼は迷いなく、私の中の彼を呼んだのだ。
私の落とした鍵を拾い、鍵穴に差し込む、トーマ。
私を部屋の中に入れて、自分も入る。
はっと気付き、心を落ち着かせる。
カマ掛けてるだけかもしれないじゃない。
「よ、呼び捨て、ですか」
「明らかに動揺してんだから気付いてんだろ?いづる」
「な、何のこと──」
「よく知らねーけど、この前依頼帰りに突然依鶴さんになっただろ」