威鶴の瞳
それを思ったのは、私じゃない。
私ではない、もうひとつの人格。
「威鶴、トーマさんは必ず家に帰れるようになると、信じていますよ」
拾った時からずっと、威鶴はトーマを信じて、まるで友達のように、時には父親のように、見守っていた。
トーマは強気で、遅刻魔で、効率悪くて、危なっかしくて。
それでも背を預けて、信じて来た。
その信頼はこの三年でとてもとても、かたくなっていた。
「近いうちに、トーマさんは帰れます」
「……」
「そう、占いに出ていましたから」