威鶴の瞳
「やめなくても、ペアを変えてまた仕事が出来れば、それでいいじゃない」
トーマが拳をギュッと握り締めるのが見えた。
また掴みかかるのも時間の問題か。
そう思っていたら、今度はトーマが想定外の発言をした。
「俺がやめる。そんで威鶴が残る。それでいいだろ?」
「トーマ?」
「バカ力なんて鍛えりゃどうにでもなる。俺以外にだっているだろ?」
「トーマ、やめろ。もともとは俺が話さなかったせい──」
「『いづる』と離れる気なんてさらさらねんだよ!」
そう叫んだトーマは、振り向いて俺に笑いかけた。
何で……笑ってんだよ?
何でトーマが、やめる必要があるんだ?
「……トーマ、信頼以上の気持ちはいらない。ここでは二人の関係、好意はは必要ないわ。出来ることなら威鶴には残ってほしい」
「俺はいつ消えるかわからないから、頼るな。俺がやめる」
「だから俺がやめるっつってんだろ!」
「お前らそれじゃキリないだろ」