威鶴の瞳
「問題は次よ、次。消えるってどういう事か、説明してもらわなくちゃいけないわ」
「あ、はい。話します。トーマには一度話したのですが」
一つ、深呼吸をする。
大丈夫、怖くない、怖くない。
一歩間違えれば、恐怖が私を飲み込む。
いつ消えるか、わからない、漠然とした恐怖が。
「柴崎依鶴は、威鶴が説明していた通り三重人格です。そのうち私と威鶴は作られた人格で、本来の人格がもう一人存在します」
「……そうよね」
「本来の『柴崎依鶴』は、何年も眠りについていましたが、最近になり、姿を現し始めました。そして彼女は私たちを認識していませんでした」
この感覚は、きっと誰にもわからない。
「私と威鶴も、彼女が姿を現した時は、漠然としか認識出来ません」
それでも、きっと『依鶴』にはこの人たちの協力も必要。
怖いなんて、もう言ってはいられない。
私が決意を固めなければ、柴崎依鶴を支えられない。
「本来の人格の時、私と威鶴は記憶がありません。つまり今……私たちは1つに戻りかけているという事です」