威鶴の瞳
映像、音声的な記憶力、推理力……。
ということは、トーマが家をめちゃくちゃにして出て来たことを、どこかで聞いたことがあるということだろうか?
「そうねぇ……そこにいる甘ったるい奴が知っていたことかもね。魔女さん」
ぴくっ、俺が反応した。
俺のことまで知ってる……?
『魔女』とは、以前依鶴があの街で呼ばれていた通称だ。
「魔女さんについては有名よね。あの町に居たのなら、知らない人はいないんじゃないかしら?」
「あの町に……居たのか?」
「電車で噂を聞いただけ。それも10年前くらいだけど。それとこの辺で有名な占い師、それも魔女さんなんじゃないの?」
「魔女と呼ぶな。威鶴だ」
「失礼、シバサキイヅルさん」
次々と出てくる、俺たちが隠していたはずの個人情報。
噂を聞いただけじゃここまではわからないはずだ。
きっと……噂と噂を繋ぎ合わせて、どこからか補助的に推測を交えているんだろう。
……にしても、これはヤバすぎるだろう。
並の記憶力や推理力じゃない。