威鶴の瞳
自分のスルースキルが年々上がっているのを感じる。
こういう女は、少し苦手だ。
トーマの妹だから、逃げられずにいる。
逃げたところで、こうして依頼されてしまうと断れないけれど。
サインを書いた竹原叶香は、トーマをギロリと睨みつけて言った。
「遥香(はるか)が『たまには帰って来い死ね失せろボケトーマ』だって」
明らかに『死ね』から後は自分で付けただろ。
「あぁ、ねーちゃん最近会ってなかったからな」
さすがトーマ、俺よりスルースキルが高い。
密かに心の内で拍手を送る。
「威鶴さんは、いつでも来てくださっていいんですよ?毎日だっていいんですからね!」
「仕事以外は必要ない事はしない」
「ケチー」
そんな俺達のやり取りを苦笑いで見ているレイン。