威鶴の瞳
外へ出るとまだまだ夜中の時間帯だった。
「帰るか」
「あぁ」
いつも通り、トーマと一緒に帰宅する。
「家寄っていいか?」
「却下」
「チッ」
あの日から……トーマが初めて家に来た日から時々コイツは家まで付いてくる。
でも疲れている時は仮眠の為に招く事もあるが、基本的には『却下』だ。
いつ依鶴(=俺)に何するかわからない。
ふと空を見る。
まばらに星が散り、満月が輝くそこに、ふと竹原叶香の時の依頼を思い出す。
あの日、トーマは一時間遅刻して来た。
それはついこの間の誘拐事件の被害者の男を探していて遅れて来た……とは聞いたが、遅刻癖があることに変わりはない。
あの日も月をただぼーっと眺めて待っていた。
あの日と少し変わった事といえば……風が少し冷たくなってきたな。