威鶴の瞳
今まで、長くても数時間、短くて一・二分程度だった。
それがいきなり27時間……確実に『依鶴』が私たちを吸収しようと動き始めている。
とりあえずスマホのロックを外すと、最初の画面でなぜか辞書アプリが表示された。
……なぜ?
――と、『依鶴』目線で考えてみると、なんとなくわかってきた。
確か……『依鶴』が眠りについた五年前にはスマホなんて出ていなかったような気がする。
使い方がわからなかった……?
そして今歩いているこの道。
よく考えてみたらこの道は――実家へ帰る時によく使っていた道で、ここから数分で実家に着く。
『依鶴』は今の、マンションになってからの家を知らないのか。
それにしてもどうやってここまで来れたのか……と考え、ふと気付く。
ポケットにカードのようなものが入っている。
取り出すと……スイカ。
スイカは五年前……あったな。