威鶴の瞳


……トーマが地雷なのか私が『男』に見えるからかよくわからないけれど、不満らしい。



だって時間帯から察するに、彼はきっとDEVILのTOPであり竹原叶香の彼氏だろうから。

11時といえば、竹原叶香は彼氏の家に訪ねる時間。



それにしても、この人目がトーマ並に怖い。

私はその視線に耐えきれずに手を挙げて言ってしまった。



「あの、私、占い師の柴崎依鶴と申しまして、その……威鶴の家族みたいなものです」



正直に、穏便に。

男の人の怖い視線には慣れていない私は、女という武器のもとに、その殺意さながらの視線から逃れたのである。



「え……え!?あの占い師さんなんですか!?」



驚きの声を出したのは、竹原叶香だった。



「『あの』?……あ」



ふと脳で復唱したが、考えるまでもない。

竹原遥香を占い、それはトーマに伝わっていた。

その事が竹原叶香に伝わっていないはずがない。



なんともおしゃべりな姉だ……。



「なんで占い師さんがここに……?」

「ちょっと言えない理由で、終電を逃してしまって」


< 324 / 500 >

この作品をシェア

pagetop