威鶴の瞳
……トーマが地雷なのか私が『男』に見えるからかよくわからないけれど、不満らしい。
だって時間帯から察するに、彼はきっとDEVILのTOPであり竹原叶香の彼氏だろうから。
11時といえば、竹原叶香は彼氏の家に訪ねる時間。
それにしても、この人目がトーマ並に怖い。
私はその視線に耐えきれずに手を挙げて言ってしまった。
「あの、私、占い師の柴崎依鶴と申しまして、その……威鶴の家族みたいなものです」
正直に、穏便に。
男の人の怖い視線には慣れていない私は、女という武器のもとに、その殺意さながらの視線から逃れたのである。
「え……え!?あの占い師さんなんですか!?」
驚きの声を出したのは、竹原叶香だった。
「『あの』?……あ」
ふと脳で復唱したが、考えるまでもない。
竹原遥香を占い、それはトーマに伝わっていた。
その事が竹原叶香に伝わっていないはずがない。
なんともおしゃべりな姉だ……。
「なんで占い師さんがここに……?」
「ちょっと言えない理由で、終電を逃してしまって」