威鶴の瞳
今まで、映像としてなら何度も見て来た。
それは、人生の中で『恋愛』というものは不可欠で、恋愛にはキスも、その先も、不可欠に等しくて。
それでもそんなシーンは占いに必要ないから、時間をすっ飛ばすことが多かった。
まるで早送りでラブシーンを見ているような感じで、じっくりとは見たことがない。
というより、そういうことをしている時は大抵目を瞑るらしく、視界は真っ暗になる。
恋愛的な占いは聞いてきても、具体的には誰も聞いてこない。
キ、キスはいつするかとか、ハジメテはどこで、とか……普通は占いでそんなのは聞かれないから。
当たり前といえば当たり前。
いわゆる『恋バナ』をする相手もいなかったし、威鶴とも基本的には話さない。
つまり、その手の話題に触れることがなかった。
だから、いきなりこんな話題は、とても困るし、無知な私自身が恥ずかしい……。
追い打ちをかけるように、竹原叶香が後ろの男に話しかける。
「ねぇコウ、『キス』って単語で照れるのっていくつまでだったっけ?」
「小学校とか中学?高校はないだろ」
「だよね。幼稚園でもほっぺちゅーくらいするし……。コウ、連行するよ。兄貴が手出して来ない理由はこれだ」
「あいよ」
「占い師さん!」
「は、はい!?」