威鶴の瞳
「ごめんなさい、夜中なのに……」
「別に夜は俺の行動時間だからいい」
そう言われてみればそうだ。
だってBOMBの依頼は基本的に夜中にするんだから……でもこんな遠い所まで来てくれたことには変わりない。
「それでもこんな遠い所まで迎えに来てもらって……」
「叶香に会いに行ったのか?」
「え?あ、違くて……」
「俺にも言えない話?」
「違……トーマにしか、言えない話」
でもまだ少しだけ。
少しだけ、信じたくない。
これを話したら、認めているみたいで。
認めたくない。
それは私とトーマの別れが近づいているようで、嫌だから。
「……この辺りはね、私が5年前まで暮らしていた所で、私はたぶん……『依鶴』は、家に帰ろうとしてこんな所まで来たんだと、思う」