威鶴の瞳
「……本当の『依鶴さん』?」
「そう。……27時間くらい、記憶が飛んでたから」
口に出すと、『いよいよか』って気持ちが膨れてくる。
27時間のうち五時間前後はきっと睡眠だけれど。
あれ、『依鶴』だから……もっと寝ていたのだろうか?
どちらにしても私が先か、威鶴が先か、それとも同時か……私たちは消える。
吸収されて、元の一つの柴崎依鶴に戻る。
「さっき、11時頃に私は気が付いて、そのまま実家に帰ろうかとも考えたけど……怖かった。自分の家なのに、帰るのが怖い」
「……」
「どうして、かな。私もトーマと同じだったのに、考えもしなかった」
今までトーマに逃げ場を与えていたのに、私も威鶴も、BOMBを逃げ場にしていた。
本当の家事体考えもしなかった私たちは、トーマよりも厄介だったのかもしれない。
逃げている、それ自体に、気付かなかったなんて……。
「家なんてな、変わるものなんだ」
「……」
なだめるかのように、やさしい声が私に降る。