威鶴の瞳
「怖い場所に無理して帰る必要はない」
「でも、トーマは帰ろうとして……」
「俺は、あの家に謝らなきゃなんねぇからな」
じっと前を見たまま、言葉を続ける。
そういえば、トーマの運転、思っていたよりも安全運転だ。
「いくら嫌いだからとはいえ、あれは自分でもやりすぎたと思ってる。だから帰るし、その時にこれから先の話もしようと思う」
「先の話?」
「依鶴さんにはまだヒミツ」
空いた片手で私の頭に手を乗せる。
トーマの手は、あたたかくて好きだ。
トーマの不器用な優しさも、直球な感情も行動も好きだ。
いつも不安な時に私を安心させてくれる。
そんなトーマと、離れたくないと思う。
私はきっと
トーマが好きだ
この胸が
そう 叫んでいる