威鶴の瞳


なんとなく、俺自身が冷たく接しているような気がする。

イライラしている。

依鶴さんじゃないから?

でも『依鶴さん』で間違いはないのに。



こっちが俺にとってのニセモノの『依鶴さん』のような気がしているからかもしれない。

怖がらせているだろうか?

それでも今は、なんとなく……優しく出来ない自分がいる。



まるでこの人は『依鶴さん』だと認めていないかのように。



マンションに着き、鍵を開け、サッサと部屋に入る。

広くも狭くもない部屋。



時計を見れば五時前。

『依鶴』さんを見れば、どうしていいのかわからないらしく、あちこちに視線を巡らせている。



「ソファーにでも座れ。……飯は?」

「……いえ、食べていません……たぶん」

「作るから待ってろ。寝ててもいい。テレビ見ててもいいから、くつろいでろ」
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