威鶴の瞳
「……威鶴、か……?」
「威鶴だ」
「……そうか」
なぜか、トーマの表情は安心しているようだった。
「何があった?」
「……威鶴ー」
いきなり俺の腰に抱きついてきたトーマの頭を躊躇いなく殴る。
変なものに目覚めてなんかないだろうな?
「いてーよ」
「セクハラ」
「男の戯れだろ?」
「体は女。俺が訴えれば通るレベル。わかるか?」
ため息を吐く。
一体起きる前に何があったんだか。
いや、察しがつくことが一つだけある。
ここに来た覚えがないということは、主人格が現れたんだろう。
それから何か事情があってここに来た。
またはトーマが暴走して連れて来られた。