威鶴の瞳


確かに、トーマは恐れられる部類だ。

長年パートナーをしていて忘れていたけれど。



依鶴は俺と大体同じ時間、トーマを見て来た。

実際に会話出来たのはここ何ヶ月かとはいえ、それまででもトーマという奴の存在や性格を十分知るまでは俺の『中』で見て来ただろう。



だから、怖がりはしない。



でも主人格は違ったんだろう。

会ったのだってここ数ヶ月で、時々出てくる程度だった。

つまり、長い時間一緒に居たことは今までなかったんだ。



怖がられた、即ち。



「泣かれたのか?」

「かろうじて泣かれてはない」



……違ったか。



「不機嫌を態度に出さないっつーのは難しいな」

「何かあったのか」

「何も。ただ……依鶴さんの気持ちがわかっただけだ」

「……」

「いつ消えるかわからないっつーのは、こえ一な……」
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