威鶴の瞳
記憶─主人格─
子供の頃、私は『幽霊』だった。
『魔女』と呼ばれていた。
「魔女と目を合わせちゃダメよ?」
「呪われちゃうらしいわ」
「しば……魔女の子、話さないように気をつけて」
「魔女が私を見て笑ったの。私、目合わせちゃって……呪われちゃったのかな?」
幼稚園時代、私はまだまだ子供で、感じたことをそのまま言葉に出す『子供』だった。
「遊園地行ったんだ。いいな」
「今度友達と海行くの?」
「ブランコのっちゃだめだよ」
あの頃はコントロールが出来なくて、過去も未来もバラバラな情報が瞳を通して次々と脳に届いてきていた。
少し暗く映るのが過去、明るく見えるのが未来。
その程度で、時間の正確さはまだなかった。
奇怪なことを言う子供から、噂に尾びれ胸びれが付き、いつの間にか目を合わせるとコントロールされてしまうという、とんでもない噂になっていた。
ただ過去と未来が見えるだけなのに。