威鶴の瞳


でも、姉は高校卒業と同時に家を出て行った。

それは私が10歳の頃で、唯一相手をしてくれる姉が居なくなることが、とても寂しかった。



両親もあまり帰ってこないから、料理も覚えた。

姉が作っている姿は見ていたから、なんとなく。

テレビもあったし、生活用品が揃っていたからお金も必要なかった。



ただ、もともと静かだった家が、さらに静かになった。



そしていつの間にか16歳――両親が消えた。

それでがらりと人生が代わるわけでもなく、ただ最初に、お金に困った。

姉も居ない、居場所すら知らない。



『捨てられた』



その事実を上書きするかのように、私は思った。

私の方から何もかも捨ててやる。



高校をやめ、変装をして占い師の道に進んだ。

最初は何をどうしたらいいのか、全くわからなかった。
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