威鶴の瞳
聞き、間違い……?
バッと顔をあげると、さっきと同じ微笑みを向けてくれている、姉。
「……記憶」
「んー……もう少しで今日は上がりだから、待ってなさい」
そう残して、姉は裏へ行ってしまった。
『チーズケーキなんて好きだったっけ?』
まるで、私の好きなものを熟知しているような言い方。
『待ってなさい』
ご飯の時間、姉がいつも作る前に言っていた『少し待ってなさい』
懐かしくて、嬉しくて、目が潤んでくるのを感じた。
だって、思い出してくれていた。
あの最後に会った日より前だって、最後に会ったのは小学校の頃だと思う。
ちゃんと私を知っている姉と――ちづちゃんと会ったのは、10年ぶりだと思う。