威鶴の瞳


……家、私は、追い出されたんだろうか?



まずそこからわからなかった。



「えっと、あの……ちづちゃん、ごめんなさい。言わなくちゃいけないことがあって」

「何?依鶴からそんなこと言うなんて……」

「うん……本当は言いたくないけど、話こじれちゃうかもしれないから」



人格のことを、話してしまおう。



「私、最後にちづちゃんと会ったあの時から、人格が増えた、らしいの」



本当は言いたくない。

だってきっと、ちづちゃんは傷つく。

自分のせいだと思いそうだから。



「増えたって……」

「多重人格ってことかな?私は自覚ないんだけど、私の中の人格の一人の仕事仲間の人が教えてくれて。最初は信じられなかったけど、本当に記憶飛んでるから……」

「私のせい、よね、それって」

「『せい』というより、たぶんきっかけ、なのかな?私の方は話してる途中から意識なかったんだ。だから追い出されたかもわからないし、その後どう過ごしてたのかもイマイチわかってない」

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