威鶴の瞳


眉を寄せて、困った表情をしてしまった姉。

全部が全部ちづちゃんのせいじゃないのに。

なんで人格が出来ちゃったのかよくわからないけど、でも、ちづちゃんだけのせいじゃない。



……ほら、体感時間三日前の記憶が、鮮明に思い出せる。



「きっとね、ちづちゃんの過去を見てしまった罰なの」

「……見たの?」

「ごめんなさい、約束してたのに。事故だったんだね」

「あの記憶を、見ちゃったの?私、目……」

「開いてたね。心臓止まるかと思った――その時かな、たぶん。ショックが強かったんだよ」



記憶から消されていたことも、確かに苦しかった。

でも、ちづちゃんが苦しんでたことの方が、もっともっと苦しかった。



『記憶を見ない』

ちづちゃんとした約束。

覚えてるよ。

覚えてるけど、どうしても知りたかった。



私がちづちゃんの中から消えた理由、知りたかったから。
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