威鶴の瞳


「……なんで私に?」

「ケータイも使ったことないのに、怖くて触るのすら怖いから」



朝何か起動させちゃったし。



「私もまだケータイだからスマホは……。いいや、アドレス書くから財布とか目につく物の中に入れときなさい。違う人格の子が登録してくれると思うから」



そう言ってちづちゃんはメールアドレスとケータイの番号、あと『柴崎千鶴』と名前を書いて、私に渡してきた。

それを財布の御札入れの中に入れる。



「結婚したんじゃないの?」



ちづちゃんが書いたのは旧姓のはず……。

慣れ親しんだその名前。



「そっちのだとわからないかもしれないじゃない。柴崎千鶴なら確実に私だってわかるでしょう?『気づいたら連絡しろ』とも書いたし。依鶴もスマホの使い方覚えてメールしよ」



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