威鶴の瞳


そのシチュエーションは、知っていた。



依鶴がトーマの姉の未来を見た時に……ずいぶん前の事だけれど、確かに見た。

『依鶴』とトーマが家に戻る未来。

トーマがそう決めていたとすると、未来が変わらずこのまま進むとすると……その頃俺は、もう……。



未来が分かってしまうという事は、希望を持ちたくても切り捨てられるようなものなんだ。

だからこの能力は脅威になる。



否定をしたくない。

もしかしたら何かしら未来が変わって、俺が消えない未来に……トーマの未来を見れば知れる事なのに、見る事が怖い。

そこで俺が消えていたら──もう、どうにもしようがないじゃないか。








──ぷつ

  消えて、なくなる──









「……あ、また、竹原さん」





俺は、どこへ行ってしまうのだろうか。
< 410 / 500 >

この作品をシェア

pagetop