威鶴の瞳
そのシチュエーションは、知っていた。
依鶴がトーマの姉の未来を見た時に……ずいぶん前の事だけれど、確かに見た。
『依鶴』とトーマが家に戻る未来。
トーマがそう決めていたとすると、未来が変わらずこのまま進むとすると……その頃俺は、もう……。
未来が分かってしまうという事は、希望を持ちたくても切り捨てられるようなものなんだ。
だからこの能力は脅威になる。
否定をしたくない。
もしかしたら何かしら未来が変わって、俺が消えない未来に……トーマの未来を見れば知れる事なのに、見る事が怖い。
そこで俺が消えていたら──もう、どうにもしようがないじゃないか。
──ぷつ
消えて、なくなる──
「……あ、また、竹原さん」
俺は、どこへ行ってしまうのだろうか。