威鶴の瞳
二人同時に立ち上がり、出勤準備を軽く済ませる。
ったく、手のかかる新人だ。
トーマの車で5分、駐車場に車を停めて、いつもの事務所に向かう。
扉を開いた瞬間、小さな時計が投げつけられて来たのを、トーマを庇いながらもよけた。
この部屋は防音だから、開けるギリギリまで聞こえなかった……。
この耳じゃなかったら危うく今頃脳震盪だ……と、何人か倒れているBOMBのメンバーを見て、既に遅い事を知る。
その中にはチョコも混ざっていて、額から血を流している。
そして騒ぎの中心には──ハサミを持つソラがいた。
今まさにそれを投げようとするソラに、俺は息を深く吸い込み、叫んだ。
「やめろソラ!!」
ピクッ、反応を返したソラは、動きを止めた。