威鶴の瞳
という事は、彼女の求めている事とは……。
俺はソラに近付き、ソラと瞳を合わせた。
じっとソラを見つめても、ソラは逃げない。
俺はソラの頭を、軽くポカリと殴った。
俯くソラに、さらに言葉を投げる。
「いい加減にしなさい」
静かに、今度は怒りに身を任せる事なく、叱った。
そしてソラは顔を上げて、笑顔で言った。
「ごめんなさい。……ふふっ」
ソラがしてほしかったこと、それは『叱られること』。
小供の頃にはどこかで聞いた事があったかもしれない。
『叱ってもらえる事は幸せだ』と。
叱ってくれる人は、自分の為に、間違った所を指摘して来てくれる人だ。
『依鶴』にも実際叱ってくれる人がいなかった。
たまに姉が『依鶴』の間違った認識を正してくれた事はあっても、叱りつけて来る事はなかった。