威鶴の瞳
「なんだか、私も嬉しいです」
「敬語なんていらないけど……慣れかしら。まぁいいわ。そしたら次に、主人格『依鶴』の丸一日の話をするわ。あなたが今の前に起きた時の、直前までの話」
「……実家付近にいた日……ですね」
あの日の記憶は……色んな意味で忘れられない。
「あの日は今の家を出て、依鶴の住んでいたあの街へ行った。そして、そのメモ」
レイ……優雨さんの視線につられるようにして、私もさっき財布の中から取り出したメモに視線を落とした。
「千鶴さんが『依鶴』の目の前で書いたものよ。千鶴さんが働いていた喫茶店で、偶然会ったらしいわ。これは千鶴さんから聞いた話」
「……」
「その時に『依鶴』は、トーマから聞いていた自分の今の状況を話したらしいわ」
「……じゃあ、千鶴は私たちのこと、知ってるんですね」
「そうよ」
レ……優雨さんは、一度深呼吸をしてから、続きを話す。
「その後はトーマの妹に会った。この話も竹原叶香さんから直接聞いたわ」