威鶴の瞳
「……どうって……」
「あ、必ずしも恋愛的な意味とかを聞いてるわけじゃなくて、まぁ、含めてはいますが」
「はあ……」
どう、と聞かれても困る。
『好き』でも変にご家族にそう言っても……もちろん、本人に言っても、困られるだけのような気がする。
「前の時も思ったんですが、依鶴さんて不思議な雰囲気がありますよね」
「不思議?」
「不思議。トーマから少しだけ聞きました。依鶴さんて、あった事を全て受け止めるような人で、自分の思っている事をあまり話さない人だって」
……それは、私の癖だ。
過去は話した。
でもその時の感情は話さない。
それは感情が『無』だったから。
でもそれは、本当に『無』だった?
泣いたり、笑ったり、怒ったり……姉以外の所ではしなかった。
それなら、姉の時の話をした?
してない。
説明に感情は必要ないと思っていたから。