威鶴の瞳

1.愛



「……っあ、ふむっ……」



唇をこじ開けて入ってくるトーマ。

いつの間にか腰と後頭部に腕が回され、『離さない』とでもいうかのように、唇に食らいつかれていた。



私から仕掛けたのに、形成逆転された。



苦しい、でも温かい想いを感じる気がする。

それが、堪らなく嬉しくて、また涙が溢れ出す。










長かったような、短かったようなキスは、私がトーマの肩を押し返すことで終わる。



「……はぁ、はぁ、くるし、まって」

「……あ。わ、わりぃ、つい」



トーマの『つい』は恐ろしい……。



「……まさか、依鶴さんが、こんなキスしてくるとは……」

「いや、深くしてきたのはトーマでしょう?」



なんと恐ろしいトーマの蜘蛛の糸のような理性……。

止めるヒマもなく流されてしまった……。
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