威鶴の瞳
いつまでもうだうだとしつつもしっかりと運転をしているトーマに、レインがついにしびれを切らした。
「アンタたちこの前話したんでしょう!?話して告ってチュッチュしたんじゃないの!?」
「な、何で知ってんだよ!?」
「は!?したのかお前!?トーマ、お前がそんな奴だったなんて――」
「おま、ちが、依鶴からしたんだよ!」
意外にも普通に食いつきを見せたトーマ。
おぉ、ようやくいつものトーマに戻ったか。
「うげ、男と……」
「戸籍上女が何言ってんだ!?大体お前主人格じゃないだろうが。俺がお前……っつーか、依鶴と何しようがナニしようが関係ないだろ!?」
「依鶴の体は俺のものでもあんだよ!」
……今はな。
そこは強くは言えない。
「大体お前、これからどうする気だ?俺も消えたら『依鶴』とまだつるむのか?それともそれっきり?」
俺の質問に、トーマは顔をしかめる。
俺は、消える事に対しては抵抗はないから、普通に話すが……でも、トーマと過ごしてきた時間は、俺が一番多い。
多少は寂しく思う。