威鶴の瞳
俺はというと……頬を引きつらせて苦笑いすることしかできなかった。
「……すごい自信だな」
「依鶴はずっとずっと愛してるっつってた。なら『依鶴』に戻ってもそうだろ。離す理由がない」
……もう、すげぇとしか言いようのない、根拠のない理由だった。
つーか『愛してる』とまで言ってたのか……。
「トーマ、ちゃんと心があったのね」
「失礼だな。心くらいある」
「その調子で家族愛も戻るといいな」
でも、この時点でトーマが家に帰ることは確定となっていた。
ただ、タイミングが掴めない。
これで俺まで消えたら、『帰る計画』はちゃんと実行されるのだろうか?
少し不安が残る。
「もうすぐ駅だ。でもその先は知らねぇから威鶴案内頼む」
「分かった」
まぁ、全てはトーマが決めることだ。
俺が過保護になる必要はない。
それから車内には、案内の声しか響かなかった。