威鶴の瞳
少し強引に、腕を引かれて隣に座るように言われたことに戸惑う。
そうか……俺は久しぶりだとしても、千鶴にとったらほんの数週間ぶりなんだ。
だから壁がない。
「お久しぶりです」
レインはそう言って向かいの席に座り、トーマもその隣に座った。
つまり俺の真ん前にトーマ、千鶴の前にレイン。
「会うのは本当にお久しぶりですね。……と、知らない子……」
「トーマです。BOMBの、威鶴のパートナー」
「あら……あ、仕事仲間の人って聞いてたけど、あなただったのね」
そう言って千鶴は微笑む。
「依鶴から聞いていました。色々と御世話になっていたみたいで」
「あー、えーと……どっちの、ですか?」
「はい?」
数秒の沈黙に、焦り始めたトーマ。
俺ではない。
しかし、確か依鶴でもない。
とすると……『依鶴』だ。
でも、それをトーマに話すのを忘れていた。