威鶴の瞳
車から外へ出ると、そこにあるのは一軒家。
「さーて、真っ赤なお顔のイヅルちゃん」
「バカトーマ」
「覚悟決めろよ?っつっても、逃がさねーけど」
これ以上赤くさせないでほしい。
10m先にある玄関を見つめ、手で顔を扇ぎつつ、言い訳を考える。
寒くてほっぺが赤くなったとか?
というか、化粧のお陰でそこまで目立たないんじゃないか?
なんて考えているうちに、もうその扉の前に立っていた。
トーマがあたしの肩を抱き寄せて、玄関に手をかける。
あの『未来』と『今』が繋がり、思わず笑みがこぼれた。
深呼吸、のち、扉の開く音。
ガラッ
トーマと私のこれからの一歩の第一声を、トーマはそこに向かって叫んだのだ。