威鶴の瞳
「あの、大丈夫ですか?」
ハッと気が付き、彼女から目を反らす。
冷や汗が頬を伝う。
大丈夫、まだ、大丈夫、暫くは……。
不安を隠して、見たものを告げる。
「時間が、かかりそうです。……弟さんが家に帰ること自体は、半年前後。家族の問題が解決するのはその後になりそうです」
「そう、ですか……。でも、帰ってくるんですね?」
彼女は私に、期待の目を向ける。
それが少し、心苦しい。
「帰ることには帰ります。ただ……大きな荷物を、抱えて行くかもしれませんが」
トーマが玄関の扉を開く。
肩を抱き寄せて、現れる女。
私と同じ顔をした、女。
「荷物……?」
「はい、大きな大きな、お荷物です」